今年で2回目の地域医療セミナーを開催しました。当セミナーは大分県地域医療支援センターと大分大学医学部地域医療学センターが主催し実施しています。大分大学医学部の使命は大分県の医療への貢献でありますが、そこで学ぶ医学部学生にとって、大学以外の医療を経験する機会まだまだ十分ではありません。大分の田舎に滞在してゆっくりと文化や食に浸り、大学より一般的な地域の医療や福祉を学び、そして実感してもらえたらと思います。
さて、その思いをくみ取ってくれた学生さんが春休みにもかかわらず、今年は20名参加してくれました(昨年より7名増)。医学科1年生が1名、2年生4名、3年生8名、4年生4名、5年生3名でした。他の学年と一緒に実習するというスタイルは斬新で、同時に縦学年での交流や繋がりももてたのではないかと思います。
バスを貸し切り国東市へ出発。道中は他己紹介でアイスブレーク。そして国東といえば「仏の里」、ですので今回は文殊仙寺というお寺にお世話になりました。修行体験!とまではいきませんが、長い長い階段を上り、精進料理を食べ、住職のありがたいお話を拝聴し、護摩焚きも体験しました。護摩焚きは皆の印象強くに残ったようで、心が清められたようでした。その後は富くじロードを散策しながら、ホテル「いこいの村国東」に向かいました。到着して心も体も清められた状態で昼過ぎからはワークショップを行いました。まず国東市長の三河明史様より市の概略のお話をしていただき、国東市民病院院長の籾井眞二先生には国東医療圏についてのご講話いただきました。その後は国東市民病院副院長の小川芳明先生や姫島村診療所院長の三浦源太先生、地域連携室やホットネットのスタッフの皆さま、市役所や保健所の皆さまに温かく迎えていただき、その方々も一緒巻き込んでのグループワークを行いました。テーマは「在宅医療がすすまない理由」と題して、国東市民病院で在宅連携がうまくいかなかった一例を提示。そこからイメージを膨らませ、地域もしくは国全体が在宅移行へすすんでいかない「障壁」について、話し合っていただきました。KJ法を利用しての議論のため多くの意見が捻出され、白熱した議論となりました。
そのままの流れで、夕方から懇親会/情報交換会が行われました。会に先立ち、今回実習が叶わなかった姫島村診療所院長の三浦源太先生に「離島医療」についてのご講話をいただきました。その後は国東市長や病院の方々と新鮮な魚料理を囲んでの交流を行いました。懇親会の後は学生さんも春休みということで、田舎の静かな夜をゆったり過ごしてもらいました。
次の日は朝から2名ずつグループに分かれてリハビリや訪問、診療所/クリニックなど様々な部署で実習を行いました。実習先病院としては国東市民病院のほか、「あさひクリニック」、「富来.Kクリニック」、「福永胃腸科外科医院」、「むさし整形外科医院」、「メープル尽クリニック」の施設が快くご協力して下さいました。学生さんは皆インタビューテーマ(課題)をもって医療スタッフや患者さんに質問を投げかけ、そしてそこで得たものを持ち帰って情報交換をしてもらいました。
学生の皆さんにとって、こういった取り組みへの参加は必ず財産となり、今後の医療に対する視野を広げることに繋がってゆくと期待します。また患者によって医師は成長させてもらいますが、同時に地域の現場やスタッフの方々も一人の医師を支え、大きく育ててくれます。休日にもかかわらず国東市役所や国東市民病院をはじめ、多くの方々に支えられ学ばせていただきました。ご協力いただいた国東の皆さまには心より感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
文責 大分大学医学部附属地域医療学センター
石井稔浩